千里の道をまだまだ走る~ときどきひとやすみ~

分析機器、医療機器の日英翻訳をしています。翻訳者生活10年目に入りました。翻訳や日々のつぶやき(料理・パッチワーク・読書)など、いろいろ書いていきます。

第30回JTF翻訳祭2021⑤ レポート:時代考証と言葉 より正確に!よりドラマチックに!

第30回JTF翻訳祭のリアルタイム配信は終了してしまいましたが、現在録画配信を視聴中です。
レポートが全然追いついていないのですが、リアルタイム視聴と録画配信を合わせて聴きたいセッションの7割くらいまで視聴が終わっています。

今回は、『時代考証と言葉 より正確に!よりドラマチックに!』についてのレポートです。

時代考証というお仕事は歴史が好きな方にはそれだけでも興味深いものだと思いますが、今回お話を聞いて、時代考証のお仕事には歴史の知識だけではなくいろいろな分野の知識が必要だということがわかり、とても面白かったです。

また、考証の根拠を探す「裏付け作業」にもかなりの時間を要することや、さらには言葉との関わりも深いということなど、翻訳・通訳との共通点も多く見ることができました。

セッション概要

講師はNHKのドラマ・ドキュメンタリーの時代考証を担当されている、大森洋平さん。

まず初めに、「時代考証とはなにか?」というお話から始まり、実際の仕事の中でどのような点に注意して考証を進めているかを実例を挙げつつ説明、つづいて言葉に焦点を当てた言葉の時代考証についてもお話をしてくださいました。

作業は違えど、同じく「言葉に向き合う仕事」をする者として、翻訳者・通訳者にはとても興味深い内容だったのではないかと思います。

感想

普段何気なく見ているドラマで、こんなにも細かいところにまで注意が払われていることにも、時代考証が比較的近代と言われている時代のドラマにまで及んでいることにも、改めて驚きました。

時代考証とは「歴史の枠を決めること」であり、大切なのは「絶対あってはいけないものを出さないこと」だそうです。
かなり厳しく確認・修正されるものなのかと思っていたのですが、そこにこだわりすぎず、演出によって劇的効果がある場合にはある程度は許容されることもあるようです。あくまでもドラマとしての面白さを損なうことがない範囲でということなのでしょう。「完璧を求めるのは無理」で、「それらしき世界を作っていくことが大事」。
このあたりも私たちの仕事で共通する点なのかなと思いました。

また、ご自身のお仕事を、専門家同士の知識の隙間を埋める「隙間産業」だとおっしゃっていました。専門家の、それぞれの知識の範囲外の分野に対応するのが仕事になるわけですが、大森さんは守備範囲を広げるために、能や歌舞伎、狂言などの古典芸能や、昔の映画、古書に多く触れるようにしているそうです。
その中で得た知識や言葉遣いなどがどこかで役立つ・・・。この点も、私達にも共通する点ですね。

「言葉の時代考証」についてのお話も、本当に興味深いものでした。
小物や所作に目が行きがちですが、言葉にも細かい注意が払われているのですね。
私は「青年」や「絶対」という言葉が明治以降の言葉だなんて知りませんでした。

また、「スマホ」、「人工衛星」、「AKB」など、現代の概念をどういう言葉で表したら昔らしい表現になるか?といったお話もとても面白かったです。(自分でも考えてみたのですが、まったく思いつきませんでした。)
大森さんが挙げてくださった言い回しには、なるほど!と、画面を前に拍手してしまいました。(AKBを表現した言葉には、思わず吹き出してしまったほど。)

いろいろなことばや表現を知っているからこそ出てくるもので、ことばへの意識の深さに改めて感心させられました

本を買ってみた

参考書籍をいくつか挙げてくださったのですが、大森さんのお話がとても面白かったので、まずは大森さんの著書を『考証要集』を読んでみることにしました。
電子書籍もあります。

目次が長く、読み飛ばして本編に入ってしまったのかと思って戻ってしまったほどです。

大森さんのモットーや今回のセッションで出てきた名言についてもこの本に書かれているようです。

じっくりとこの本を読んで、時代考証の世界を楽しんでみようと思います。

 

 

 

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