千里の道をまだまだ走る~ときどきひとやすみ~

分析機器、医療機器の日英翻訳をしています。翻訳者生活10年目に入りました。翻訳や日々のつぶやき(料理・パッチワーク・読書)など、いろいろ書いていきます。

2016年翻訳祭⑦ 感想 (4)

*旧ブログ(アメブロ)からの転載・修正記事です。

翻訳祭からも随分日が経ってしまったので今さらな感じもするのですが、記録として残すために、引き続きセッションの感想を書きたいと思います。

■セッション3:

以前の記事で書いたように、セッション3では「パネルディスカッション 場外乱闘の翻訳支援ツール対決!~そこまで言っていいんですか? ここでしか聞けない業界裏話~」を聞くつもりでいたが、開始直前まで迷って、結局別のセッションに参加することにしました。

支援ツールの場外乱闘も興味はあったのですが、翻訳支援ツールやその他ツールに対しては、自分なりの、ゆるぎない考えがあるので(今後変化するかもしれませんが)、ひとまず近々に必要な情報や、翻訳者としてどうあるべきかというような内容のものの方が今は必要だと感じました。

そして選んだのはこのセッション。

■私たちは逃げ切り世代?-翻訳者に未来はあるのか

まさか、「未来はないですね〜」なんていう結論になるわけないよね?と思いつつ、部屋に潜り込みました。

担当されたのは、 井口富美子さんと実川元子さん。

スライドや資料は特になく、お二人の対談という形でセッションが進められました。
井口さんはいろいろなメディアでお見かけする機会は多いのですが、直接姿を拝見したのは今回が初めてでした。

失礼ながら勝手な人物評をさせていただきますと、精力的な活動や写真から勝手に想像していたイメージとは違い、物腰の柔らかい、穏やかな話し方をされる方でした。でも、離される内容からは、確固たる信念・・のようなものが感じられました。
そして、実川さんにつきましては、失礼ながらお名前を知らなかったのですが、プロフィールを見て「フランス語専攻」だけど英語の翻訳者というところに、勝手に親近感を覚えていました。また、キビキビとした口調で語られるお話から、やはり信念を持って翻訳に取り組まれていることがヒシヒシと伝わってきて、背筋がピンと伸びるような思いでお話を伺いました。

実川さんは、初めは翻訳に未来があるとは思えず、このセッションを依頼が来た時は一度断られたとか。
ただ、「翻訳というおしごと」という本を書くにあたって10人の翻訳者にインタビューをしたところ、「未来はあるのではないか」と感じられたからだそうです。

ここであまり詳しくは書けませんが、私の中で特に響いたものを挙げてみたいと思います。

まず、勉強について。

  • 「勉強のための勉強」ではなく、「仕事につながる勉強」が大事。
  • 毎日少しずつでもいいから、地道にコツコツずっと続けていく積み重ねが重要。

勉強は大事ですが、大事なのは仕事につなげること、そうしないと「いつかなれたらいいな」で終わることになりかねません。
何度か「期間や目標金額など、明確な目標と具体的な数値を決めて、それに向かっていくべき」というアドバイスをいただいたことがあり、自分の中である程度の目標を立てたのですが、改めてこの先について考えさせられました。

  • 自分のブランド化=自分にしかできないことをつくる。 名刺を配って回るとかそういうことではなく、「自分にしかできないこと」をつくるのが大事。「なんでも出来る」は「何もできない」ともいえる。

「私にだけ出来ること、自分のセールスポイントはなんだろう?」と考えてしまいました。
ここでは恥ずかしくて語れませんが、これだけは!と自信をもっていることも一応はあります。ですが、私だけに言えるものではないので、ポイントとしては弱いかも。肝心な英語力、日本語力も、もっと磨かないとなぁ・・とか、いろいろ考えをめぐらせつつ、この点は今後肝に銘じてやっていこうと思いました。

  • 翻訳をする上での三種の神器

どれも最もなものなのですが、意外というか、予測していなかっただけに「おおっ」と思ったのが、井口さんが挙げられものでした。

  • 翻訳以外の世界を広げて、どこの世界に仕事があるかを探すべき

常にアンテナをはって、世の中の流れが変わっても対応出来るようにすることが大事なのだなぁと、これもしっかり刻み込んでおこうと思いました。

他にもいろいろ重要な内容がたくさん盛り込まれていましたが、

  • 翻訳者は翻訳業界の底辺だと思われがちだけど、重要な部分を支えていると考えて、使命感をもって、原文が伝えたいことを絵を描いて翻訳することで、読者に伝えていく、そうしていくことが未来ひらけるのではないかと。

鍵は、翻訳者・・

「翻訳に未来はある」

現役の翻訳者から話を聞いた上で導き出された結論が「未来はある」だったというのが、何とも心強く感じます。

「翻訳は常に危機にさらされている」

実川さんがそうおっしゃっていたのも印象的でした。
楽観的でいてはいけないけれど、悲観的になりすぎず、明るい未来のために翻訳者としてできることを探っていきたいと思いました。

『翻訳というおしごと』ですが、会場で販売されていた書籍は残念ながら売り切れで買えませんでした。
その後すぐ注文して届いているので、今夜から読み始めようと思います。