千里の道をまだまだ走る~ときどきひとやすみ~

分析機器、医療機器の日英翻訳をしています。翻訳者生活10年目に入りました。翻訳や日々のつぶやき(料理・パッチワーク・読書)など、いろいろ書いていきます。

2016年翻訳祭⑤ 感想 (2)

*旧ブログ(アメブロ)からの転載・修正記事です。

今度は、参加したセッションのことについて書きたいと思います。

内容について詳細は書けませんが、どのセッションからも得るものがたくさんあったように思います。
勉強になったこともたくさんありますが、これまでの自分を振り返り、今後の自分の進み方についていろいろと考えさせられた1日でした。

■セッション1 :英訳は、日本語の読みで勝負!

以前サンフレアのオープンセミナーで受けたセミナーがとても素晴らしく、今回もとても楽しみしていたので、張り切ってかなり前の席に座りました。

結論から言うと、共感する点ばかりで、しかも、力と勇気(?!)をいただけたセッションでした。

その理由は、2つあります。
1つめは、自分の今やっていることが認めてもらえたように思えたから。(かなり勝手な解釈ですが。)

私は今英訳の仕事をしていますが、取説の英語の原稿ライティングの経験はあるものの、翻訳の経験はほとんどない上に、いきなり英訳から入ったため、ネイティブでもないのに、どこかで負い目があるというか、自信が持てないでいました。
でも、日々翻訳する技術者の謎の文書を見て、「求められているのは英語だけじゃない。この内容を理解してわかりやすく説明するのは、(英語のネイティブよりも)私の方がうまくできるはず」と自分を励ましながら、日々翻訳に取り組んでいます。

私が今いる会社は、もともとは翻訳会社に翻訳を依頼していたのですが、上がってくる訳が望んでいるような訳とは程遠いもので、結局意図している内容になるように自分たちで修正しなくてはいけなくなり、そのコストと労力を考えると、社内に英語がちょっとできる人を置いてその人に翻訳させた方が良いのではないか・・・。そう考えて、派遣で翻訳者の募集をかけたそうです。
(英語ができる=翻訳ができる・・というわけではないので、それはそれでずいぶん思い切ったことをしたなあとも思いますが、そのおかげで私がこの職につけたわけです。)

装置や構造が複雑なため、メールでのやり取りで説明するには限界があること、そもそもの原文があまり(かなり?)よくないこともあり、これでは思うような英文が上がってくるわけないとは思うのですが・・。

私の書く英文はネイティブが見たら拙い文も多々あるとは思うのですが、少なくとも、日本語が言おうとしていることを理解しようとして、わかりやすい内容の英文にはできていると思います。でも、それって私の独りよがりかな?と思っていたら、「英文に合わせて和文を直そう」とか「英文の方がわかりやすい」とか「この日本語からよくこの英語をかけたね」という言葉をかけていただき、とてもうれしく思うことがありました。

・・・と書くと、セッションを聴いた方はあれ?と思いませんか?
このあたりの話が、遠田先生がお話してくださったことと共通する点があり、そうか、これでいいのか・・とものすごく励みになりました。(レベルが違いすぎて、共通点というのも失礼なくらいなのですが、少なくとも私の中ではそのように思えた)

また、「角」の読み方が思っていたのと違って訳を悩まれたとのお話もありましたが、これも実は同じような経験があったのです。
去年訳したサービスマニュアルの中で、「ノズル先端と冶具の角を合わせて・・・」という文がありました。この「角」は、何の疑問もなく「かど」だと思って、でも、読み進んでも全く話のつじつまが合わない。何度も何度も出てくるのですが、ますますわからなくなって、これはダメだと思って技術の人に質問に行ったら、なんと、「かど」ではなくて「つの」だったことが判明。
冶具に鬼の角のような突起がついていて、その突起の先端のことで、ノズルの先端と、その冶具の突起の先端を合わせて・・・ということでした。
「角」が「つの」だとわかった瞬間、霧が一気に晴れたようにわからなかったことが一気にわかり、翻訳がさくさく進んでものすごい爽快感を味わった記憶があります。

長くなりましたが、素晴らしいと思えたもう一つの点。 ずっと疑問に思っていたことが解決したこと。

何度も言いますが、謎の原文が多いので、わかりやすく訳すには内容を補足したり、説明したり、省略したり、が必要で、出来上がった英文は、原文に忠実とは言えないことがあります。
これは許容範囲なのか?ずっともやもやしていました。 (今の会社の人はいいと言ってくれているけれど、一般的にはどうなのか?意訳なのだろうかと?)

遠田先生は、翻訳をするときに大事なことは、内容を理解する=「意味を訳す」ことで、読者が正しく意図を理解できるように英訳をされているとおっしゃっていました。

そして、こうもおっしゃっていました。
よく言われる、「翻訳するときには、何も足さない、引かない」は、英訳には当てはまらない、等価に変換されている以上、それは意訳ではない、と。

もう、とてもスッキリした気分です。

そして締めの方でお話してくださった結論部分も、とても心に響くものでした。

もうとにかく、ひたすら、うんうん!そうそう!と首を振り続けていた状態です。 遠田先生のセミナーは、また機会を見つけて参加させていただきたいと思います。