5月末に予約していた『自動翻訳大全』が届きました。
表紙と帯を見て、期待していた内容とは少し違うかなと思ってしまったのですが、とにかく気になるのでざっと目を通してみました。
たしかに、Google翻訳などの「機械翻訳の使い方のコツ」的な本はこれまでどこにもなかったため、画期的な本ではあるのかもしれませんし、帯にある内容にも間違いはないのかもしれませんが、翻訳者として翻訳に携わる者としては、ザワザワしたものを感じずにはいられませんでした。
機械翻訳について思うことがまとまらない!
機械翻訳についてはかなり情報収集し、実際に使ってもみたりして、考えていることはいろいろあるのですが、いつまでたってもまとめることができません。
大きいサービスはある程度限られてしまうため、どの機械翻訳の事をいっているかわかってしまいそうなのもありますし、なによりも、機械翻訳に関わる人のいる立場によって、考え方も機械翻訳の価値も大きく変わるものだと思うから、違う立場の人にとっては賛成できなかったり気持ちよくない内容になってしまいそうだからです。
もともと機械翻訳は、使い方にや条件によってはアリだと思うし、ハイレベルなところで生産性を実際に挙げていらっしゃる例や、機械翻訳をクセを熟知しプレエディットを行うことで翻訳効率を上げている例もありますし(これもまた特別にハイレベルな例に限りますが)、それはそれでその人の武器だとも言えそうなので否定はしません。また、どうやっても今後機械翻訳は広まっていってしまうのは避けられないと思うので、すべての翻訳者、学習者が「機械翻訳を使うのはやめたほうがよい」と言ってしまうのはそろそろ難しい時代になってきているのかなとは思っています。(ただし、ちゃんと分かった上で自分で選んでいく必要はある)。
でも、翻訳やチェックが誰にでも簡単にできる簡単な作業だという認識が広まってしまうような機械翻訳の導入には否定的な見方をしてしまいます。
今回は、押さえるべきところはある程度押さえられているなとは思いつつも、どうしてもザワつく思いを抱いてしまいました。主に書いている方が機械翻訳サービスを展開していらっしゃる方だから余計にそう感じてしまうのかもしれません。
ただし、ビジネス以外の用途で品質が問われないところで機械翻訳(以下MT)を活用したい!という方にはとても良い本だと思います。
気になったところメモ
ざっと流して読んだだけなので多少の思い込みもあるかもしれませんが、とりあえず最初に感じたことをメモしておきます。
上げるとキリがないので、おおまかにざっくり。
他の翻訳者さんがどのように感じたのかとても気になるところです。
- 「パターン化された文書ほど正確な翻訳がしやすくなる」など、自動翻訳の向き不向きについても説明されていますし、「AI翻訳も間違えることはある」、「持つべきなのはうまく自動翻訳を使いこなすスキル」としていながらも「社内の人材は限られているし外注すればコストがかかるので、その解決の手段として企業は自動翻訳導入に乗り出している」と、企業での導入事例を例に挙げている
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「翻訳支援ツール」を取り上げているページがあるのですが、この取り上げ方にはちょっと疑問。疑問に思う方がおかしいのか?
- 「プロ翻訳者のポストエディット」についての記載。本当にこの程度の作業なのか?!「ポストエディットとは?」という根本からもう一度考えることから始める必要があるのではないかと思った。
- 「機械翻訳を使いこなす各種テクニック」については、確かにその通りだとは思うが、これって英語ができない人に簡単にできるのものなのかな?英語ができる人目線の使い方な気がする。
- ちゃんと使えているかどうかの評価は誰がするのか?責任はだれがとるのか?
- そして、今回読み飛ばしてしまったのですが、「音声翻訳」についての記載もあります。最近自動通訳のサービスがあることも知り驚いたのですが、この精度はどうなのでしょうか?
機械翻訳の開発者にとっては、機械翻訳レベルをどんどん上げていくことが使命であって、それを役に立てる人がいればよいわけで、どう使われるかまでは開発者に責任ではありませんが、使う側はしかるべきところでよく分かった上で使うべきなのに、売り側が正当な評価と伝え方をしていないことで、使う側が正しく使えていないケースも多いのではないかなと思ったりもしています。
ことばの壁がなくなると世界が広がるので機械翻訳は今後もさらに普及していくのでしょうけれど、不本意な形で人間翻訳が評価されなくなることだけは避けてほしいなと思ったりもしつつ、最近みた機械翻訳では、あまりのレベルの上がりっぷりに衝撃を受けて、ちょっと暗い気になったのも事実だったりします。
そんなわけで、もやもやザワザワな気持ちが止まりません。
ざっくり読みすぎたかもしれないので、もう一度頭から読んでみたいと思います。
メモ:機械翻訳、自動翻訳、AI翻訳、いろいろ言い方ありますが、そういえば本の中でも混在していたような。使い分け、されているのか読み直しの時に確認してみよう・・