千里の道をまだまだ走る~ときどきひとやすみ~

分析機器、医療機器の日英翻訳をしています。翻訳者生活10年目に入りました。翻訳や日々のつぶやき(料理・パッチワーク・読書)など、いろいろ書いていきます。

第31回JTF翻訳祭 2022 ② 翻訳チェックについて思うこと ~「翻訳業界における様々なキャリア」より~

翻訳祭はほとんどが録画視聴ですが、リアルタイム視聴も混ぜながら聞きました。

どのプログラムもそれなりに考えさせられ、自分を振り返るよい機会になりました。
また、聞いてみたら予想以上に興味深い内容だったりなど新たな発見もあり、翻訳祭に申し込んでよかったと改めて思いました。

今回は、以前のように視聴したプログラムごとに感想を書くのではなく、特に印象に残ったもの、またはそこからいろいろ考えたことなどを書き残しておこうと思います。



10/4(火)『翻訳業界における様々なキャリア』の中で、由良さんがおっしゃっていた翻訳チェックについての発言にこのようなものがありました。

  • 翻訳チェックは リライトとは違う
  • 翻訳チェックでは、表現を改善するのではなく、翻訳者が見落としやすいところを重点的に拾っていく
  • 翻訳者と同じ思考回路をたどっていても意味がない、重なる項目はあるけれど翻訳者とは違う項目を見る

チェックの仕事の話はあまり表に出てこないので、チェックのあり方的なことを簡潔にまとめてくださったのがとても印象に残りました。

本当にその通りで、チェックは翻訳とは別の仕事だと割り切って作業をすることが必要だと思います。

ここから先は、由良さんのこの話をきいて、翻訳チェックについて私が考えたことについて書いてみたいと思います。

翻訳者としてはミスのない英文を納品してきているはずなので、チェッカーとしては、ないはずだけどあるかもしれないミスを見つければいい。

究極ですが、これが理想のチェックかなと思います。

もちろん、チェック時には「大丈夫なはず」という油断は禁物で、原文の解釈ミスを含めた誤訳、ケアレスミス、編集の都合による修正(大文字小文字の違いや文体)などを中心に見ていきます。(翻訳者がネイティブなのか日本人なのかによってもチェックポイントは変わってきます。)
翻訳の質が良くない場合には、申し送りで連絡します。(程度がひどい場合には途中で連絡することもあり)
ただ・・・。
翻訳の質については、どの翻訳者に翻訳手配をしたかにより決まるものだと思うので、チェッカーがどうにかできるものではないと思います(できても改善程度)。

時々「チェックをしてみたらひどい翻訳で、全部書き直した」という話を目にしますが、これはチェッカーの仕事の域を超えているかなと思います。
別の作業(リライト)としてお金をもらえるとか、いくら時間をかけても負担がないのであればリライトもありですが、そうでなければそれはもう別のお仕事で、たとえできる能力があったとしてもチェッカーとしてはやるべきじゃないと思います。

翻訳が上がってきた時点で質はある程度決まっているので、チェックでその底上げをするのには限界があるかと。ですから翻訳チェッカーは、その翻訳者の出してきた翻訳レベルの中で必要なチェックをするべきかなと思っています。(だからこそ、翻訳会社はいい翻訳者に仕事を出したいと思うのですよね)。

チェックで拾えるのは誤訳やケアレスミスなどの問題の発見と英訳の多少の改善であって、翻訳の質はやはり翻訳会社の手配した翻訳者次第

こう書いてしまうと、チェッカーは翻訳の中にまで踏み込む必要がないというように聞こえるかもしれませんが、そういうわけではありません。
もちろんチェッカーは翻訳の質の評価をできるだけの英語力、文法ミスを発見できるだけの文法力はないといけないお仕事だと思います。(必要な指摘だけを入れて、くだらない指摘を入れないで済むように?)
だからこそ、「翻訳学習者では無理」、とか「翻訳者よりも上のレベルが必要」、とか言われたりもするのでしょう。(旧ブログで書いたような記憶もありますが、私はこの意見についてはある意味では賛成、ある意味ではどちらかというと反対です。

そうはいっても実際、割り切ってできるチェックばかりではないのも事実。

ただ、もしチェックの仕事を外注として受けるのであれば、良い翻訳がたくさんまわってくるような環境で、あるかもしれないミスを探せるようなチェックの仕事を受けられるのが理想かなと思います。(楽だからとかではなく、本当に勉強になるのでやる価値がある、という意味です。)



私は昼間は社内翻訳者、夜は副業でチェックのお仕事をしています。

なぜ私がチェックの仕事を受けるようになったかというと、同業者が社内にいないので、他人の翻訳を見る機会があまりありません。自分の書く英文がパターン化してしまうのを避けるためにもレベルの高い翻訳を継続して読みたかったので、チェックの仕事を副業で受けるようになりました。(翻訳を副業にできるのが一番良かったのですが、私の生活環境では時間的に制約がありすぎてなかなか難しかった。)

ですから、チェックを受ける際にはどんな英文でもいいわけではなく、できるだけレベルの高い翻訳のチェックをしたいと考えています。

これまで数社からチェックのお仕事をいただいてきましたが、中には毎回ビックリな翻訳が多くて疲れてしまう会社もありました。
変な翻訳を見ても私には何のメリットもないので、もう今はその会社からのチェックは受けていません。

今メインでチェックの案件をいただいている会社は、翻訳のレベルが比較的高いのでかなり勉強になっています。副業なので対応量もそれほど多くないですが、途切れずに続いているということは、それなりに重宝していただいているのではないかなと思っています。

チェックの仕事は翻訳と比べると全然レートがよくないのですが、翻訳の勉強ができ、翻訳会社との直接のやり取りを経験でき、ツール情報が得られるなど、プラスの面があるので、社内翻訳者を続けている間はそれでもいいかなと思っています。

翻訳者が条件のいい翻訳会社に乗り換えていくように、チェックについても良い翻訳を回してくれる会社に乗り換える、というのは、もしチェックでお仕事を受けようと考えている方いれば、ぜひともおススメしたいです。

そうすれば、「全部書き直しばかりで割に合わない」とか、「変な翻訳を読んでわけがわからなくなる」といったこともなくなるし、お値段以上のお仕事ができると思います。

先日「翻訳とチェックは両立できるのか」的なツイートを見かけました。

可能だと思います。
ただし、いい翻訳を出してくれる会社に巡り会えれば、という条件が付けば・・・だと思いますが、少なくとも私は両立できているので、今回この件についても書き残しておくことにしました。

 



ブログ(旧ブログ)を始めた時からチェックについては思うことがあるのですが、いまだにうまく書けません。
今回も2週間近くも前に書き始めた記事なのに書いたり消したりし続け、公開できないうちに翻訳祭がおわってしまったくらいです💦
でももう、いいや、公開してしまうことにしました。

翻訳祭のプログラムは、全体の2/3以上は聴き終えましたが、まだいくつか聴けてないものが残っていますので、月末までにしっかりと聴き終えようと思います。

 

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