千里の道をまだまだ走る~ときどきひとやすみ~

分析機器、医療機器の日英翻訳をしています。翻訳者生活10年目に入りました。翻訳や日々のつぶやき(料理・パッチワーク・読書)など、いろいろ書いていきます。

【読了】 FAHRENHEIT 451

 FAHRENHEIT 451、読了しました。
(1週間ほど前のことなので少し話題としては古くなってしまいましたが、忘れないようにメモとして残しておきます。)

この本は『華氏451』の原書です。

以前読んだ George Orwell の 1984  の他にもディストピア小説を読みたくて、 Aldous Huxley の Brave New World と Ray Bradbury の FAHRENHEIT 451 で迷った結果、 FAHRENHEIT 451  を先に読むことにしました。

ざっくり全体の感想

長編と言えるほどの長さでもなく、ストーリーとしてもとてもシンプルなものではありましたが、長い文がや情景描写、比喩表現が多く、私には少し読みづらい本でした。

Fahrenheit 451 の世界では、「ラウンジ壁」なる、モニターのようなものが登場します。このラウンジ壁にはいろいろな情報や映像がひたすら映し出され、「家族」と言われる人たちとの会話もできたりします。「巻貝」と呼ばれるイヤホンのようなものからは、ひたすら心地よい音楽やメッセージが流され続け、人々はひたすら快楽を求めるようになり、深く考えることもしなくなる・・・。

SNSやYouTubeなど、スマホに夢中になっている現代があまりにこの世界と重なるので、これ70年も前に書かれた小説なのかと思うと恐ろしくなります。

ただ、高性能の機械の警察犬(mechanical dog)や、ものすごいスピードで走る車が登場して近未来的なものを感じさせられる反面、ものすごいスピードで走っても車内から広告が読めるように、広告の横の長さが長~くなっている・・という、微妙にアナログなものもあって、そのアンバランスさに少し安心(?)したりもしました。

長い文が多かった

途中から慣れたのか気にならなくなりましたが、1つの文がとても長く、iphoneの画面で見た時に1ページ近く続くような文もありました。
ぼーっと読んでいると何の話をしているのかわからなくなるので。眠い時に読むのは避けました。

情景描写や比喩的な表現が多かった

情景描写や比喩的な表現がかなり多かったのですが、苦戦したのはこの部分。
きちんと理解できているのかを確認するために、日本語の本を購入することにしました。

旧訳と新訳と迷いましたが、新訳を購入。

英語を読んでから日本語を読んで訳を確認していきましたが、まあまあ理解はできていたようです。
でも、この「まあまあ」は、ちょっと怪しいかも。

読めたような気にはなっていましたが、多分、言語化(=翻訳)しようとしてもできなかったと思います。
ということは、きちんと理解できていなかったとでしょうか?

こういうところも確実に読めるようにすることが、今後の課題です。

翻訳について

最初の方で主人公モンターグと少女の会話が出てくるのですが、モンターグがチャラい感じなので重々しいこの世界とのギャップに違和感を抱いてしまいました。

旧版ではどうなっているのか図書館で旧訳をパラパラとめくってみたところ、こちらは少女がモンターグのことを「あんた」と呼んでいたりして、別の意味での違和感がありました。

言葉1つでイメージというか、世界観が一気に変わるので、翻訳って面白いなと改めて思いました。                               

Firemanの訳

この世界でいう fireman は、火事を消す「消防士」ではなく、「『悪』である本を、焼き払う人」のことを指します。

旧訳では「焚書官」、新訳では「昇火士」とされていましたが、最初の印象では「焚書士」の方が良い気がしていたのですが、訳者あとがきに「昇火士」という訳にした理由が書かれていました、納得。

年数

こんな英文が出てくるのですが、

We’ve started and won two atomic wars since 1960.

この訳文が

僕らは2022年以降、二度、核戦争を起こして、二度とも勝利した!

となっていました。

なぜ、1960年を2022年としたのでしょうね?

新訳が出たのは2021年のようですが(Kindle版が2022年?)、原作が書かれたのは1953年だから、その時よりは少し未来の1960年。どうせなら2022年ではなくて2030年くらいにしとけばよかったのに。

新訳の書籍版や旧訳ではどうなってるか見てみるためにも、やはり改めて2つの訳書を読み比べしてみようと思います。

次に読む本

次も続けてフィクション。

バイオリンが好きなので、バイオリンをテーマの小説を探してみたところヒットした最近の作品です。

あまり内容は気にせず購入してみたのですが、かなり評価が高いようなのでとても楽しみです。

この本の和訳がもうすぐ発売されるそうです。
また翻訳を確認しながら読んでいってみるのも楽しそう。

最初の方だけざっと読んだのですが、面白そう。

ケースの蓋を開けたらバイオリンがなくなっていたという・・・ところまで。

バイオリニストにとってはバイオリンは命の次に大事なものであるはず。
楽器は肌身離さず、トイレにまで持っていくくらいだと聞いているので、なくなってしまうだなんて考えるだけでも恐ろしく、この時点で主人公の衝撃が想像できました。

バタバタしていて少しずつしか読めないのですが、夏休みまでには読み終えたいところです。