千里の道をまだまだ走る~ときどきひとやすみ~

分析機器、医療機器の日英翻訳をしています。翻訳者生活10年目に入りました。翻訳や日々のつぶやき(料理・パッチワーク・読書)など、いろいろ書いていきます。

先行詞につくthatとthose ― 『読解のための上級英文法』より

先行詞につく that と those についてですが、こちらも6年半ほど前に記事を書いていました。
以降、いろいろな英文でこの that/those に出会いましたが、in turn 同様、自分で英文を書くときには使えずにいました。

今回読んだ『読解のための上級英文法』にもこの that/those の説明(⇒6.1 先行詞につく that, those)があったのですが、とてもわかりやすかった上に、自分の中で未解決になっていた疑問が解消されたので、そういう意味でもこの本はなかなか良い本だったと思います。


過去の記事のとおり『翻訳の布石と定石』(⇒例文2C-6, p.101)では、この that/those は「先行詞を明示する訳出不要なthat/thoseの存在」として説明されています。
また、『翻訳の泉』(第7回 関係構文の話 例文7&8)には(著者が同じだから当然ですが)、「先行詞をはっきりさせるために、先行詞の前にthat / thoseを付けることができます」という記載もあります。

この「先行詞をはっきりさせるために」という部分を私はさらっと読み流してしまっていました。・・・というよりも、過去の記事のタイトルにもあるように、この that と those を、「先行詞を明示する目印」としてしか見ていなかったようです。
訳出しないにもかかわらずなぜそこに置かれるのか、その意味をもっとよく考えるべきでした。

今回『読解のための上級英文法』の記載を読んで、「そういうことか!」と納得がいったのは、この点を説明したものでした。

その記載とは、こちらです。

先行詞がA of Bという形をしている場合、<that A of B>のようにAの前にthatが置かれることで、BではなくAが先行詞であることがわかります。なお、訳す場合にはこのof Bの部分を関係詞節よりも前に訳すと読みやすい日本語になります。

『読解のための上級英文法 p.86』より

どういうことかというと・・・
『翻訳の泉』第7回 関係構文の話 例文7を挙げてみました。(例文の先行詞は A of B ではなく<A of B of C>ではありますが、とても分かりやすい例文だったので。)

The Dollar Amount of that portion of the Aggregate Purchasers' Investments that is not denominated in U.S. Dollars will not exceed the Foreign Currency Limit.

購入者総投資額のうちの米国ドル建てでない▼部分のドル換算額が、外貨限度額を超えない。 『翻訳の泉』より

これを見ると確かに、関係代名詞が係るのは portion ということがよくわかりますね。ついでに、この例文にもあるとおり、of 以下を関係詞節より前に訳すと、たしかに読みやすいというのもわかります。

そんなこと、とっくにわかってるとか、『翻訳の布石と定石』や『翻訳の泉』の説明だけでわかっていたよ、という方もいらっしゃるかもしれませんが、少なくとも私はわかっていませんでした。この that/those について、文法書でもそれほど大きく、深く取り上げてはいないようですが、何か疑問点があった時には、いろいろな文法書や参考書の複数の説明を見て、自分が納得いくまで突き詰めていくことが大事だなと思いました。


さて、私の疑問が何だったかというと

先行詞が Aof B の場合、関係代名詞以下が係る場所がどこなのか、読み手が迷ずに判断できるような英文を書くためには、いったいどうしたらよいのか?

ということでした。

先行詞がA of Bの場合には、関係代名詞節が「A of B全体」に係る場合、「Aだけに係る場合」、「Bだけに係る場合」があると思うのですが、その判断は文脈から判断するしかないものなのか?自分が英文を読む場合はともかく英文を書く時に、読み手が絶対誤解しないような英文を書く方法はないものなのかなと、ずっと考えていました。

特に、Bだけに関係詞節を係らせたいときには、Bの前にthat/thoseをつければ迷わずに済むということですよね。

これまではこの that/those は、後に関係代名詞が続くことをにおわせる目印としてしか見ていませんでしたが、どの部分が先行詞なのかをはっきりさせるために置けばよいということが今回『読解のための上級英文法』からわかったのは、目からウロコでした。

今後は是非積極的に使っていきたいものです。

(* 2024.1.20:緑字部分、加筆・修正)


この、「先行詞が A of B の場合、関係代名詞以下が先行詞のどの部分に係るか問題」ですが、実はもう1つ気になっていたことがあります。

あるきっかけで急に気になり始めてしまい、いろいろな例文を集めているのですが、解決したとはまだ言い難く、様子見ではあるのですが・・。

次回はそのことについて書いてみようと思います。