千里の道をまだまだ走る~ときどきひとやすみ~

分析機器、医療機器の日英翻訳をしています。翻訳者生活10年目に入りました。翻訳や日々のつぶやき(料理・パッチワーク・読書)など、いろいろ書いていきます。

納品時のコメントの付け方について②

*旧ブログ(アメブロ)からの転載・修正記事です。

すっかり夜になってしまいました。

朝の続きです。

コメントを残すなんて、プロ意識が足りない!と言われたというところまで書いたと思います。

書かれている日本語が、解釈に間違えようがないくらいにきちんとしていて、内容が100パーセント間違えようのないものなのであれば、このように言われてしまったとしても納得できるかもしれません。

無駄にコメントを付けるのは自分の時間も相手の時間も無駄にするだけなので・・。

でも、残念ながら、今やっているお仕事は、そういったものからは程遠いものです。
怪しい日本語をいかに正しく理解して英語にするか、ここが私達に求められているものであり、書かれている内容を勝手に解釈してしまうのは、あまりに危険すぎる(=誤訳につながる)のです。
具体的な例は挙げられないのですが、2通りの意味に取れるものや、違っていそうなものや、技術的に私達には理解が及ばず、動きを実際に確認するなり説明してもらうなりしないと説明しきれないものもたくさんあります。

だからこそ、最小限に絞ったコメントというのは必要だと思っています。

また、原文に対する指摘も、「私達は派遣なんだからそこまで求められていないし、余計なお世話だとうるさがれるだけだ」とも言われました。

当然のことながら、私はこれにも納得できませんでした。
これまで派遣で働いたことはなかったので、そういう考え方も職場によってはあるのかもしれませんが、少なくとも私がいた会社で働いていた派遣社員の方は、そんな無責任な人はいなかったし、社員と変わらないくらいの責任で仕事をしていました。
状況は違うにしても、派遣社員だからそこまでやる必要がない・・というのはどうなのでしょうね。翻訳の精度に関わるものなら、責任の範囲内だと思うのですが。

私は、原文のミスを指摘することも、翻訳者がやれる範囲でするのが良いと思ってます。
もちろん勘違いもあるかもしれないですし、大きなお世話と思われることもあるかもしれませんが、勘違いなら「間違いでした」と言えばいいし、「余計なお世話」と怒る人がいるなら、その時に対応を考えればよいのだと思っています。

そもそも、原文の矛盾に気づくくらいこちらは内容をきちんと読み込んだ上で翻訳をしているのだというアピールにもなるのではないかと思っています。

ちなみに・・
私が翻訳者から翻訳を受け取る側だった頃は、コメントもなく勝手にいろいろ解釈してしまう翻訳者よりも、まっとうなコメントを入れてくれる翻訳者の方を評価していました。 きちんとわかってくれているなと安心できたので。
逆に、明らかにおかしな(間違っている英文を)そのままスルーして訳されると、「内容がわかっていないのかな?」と不安になることもありました。

もちろん、原文の間違いを見つけることは翻訳者の仕事ではないので、見つけられなかったからと言って翻訳者に対して責任を追及するといったことはあってはならないことですが、翻訳者側からもそういう態度をアピールすることは必要だと思うし、「私はちゃんとやっています」という姿勢を見せ、他の翻訳者に対して自分を差別化する意味でも有効ではないかと思います。

そして、コメントについても、それが適切な内容であれば、チェッカーに対しても有益な情報になると思っています。
上がって来た翻訳をチェックする場合、正直言って、全部を読みこんでチェックするのは、時間的にもかなり厳しいことの方が多いので、チェッカーは的を絞ったチェックをすることが多いのです。 (日英の翻訳のみの仕事は別ですが、少なくとも英語ー多言語間は。)
翻訳者の方から、もしも注意してほしいところがあるのなら必要に応じてコメントがあると、助かることも多いです。

分からないから適当に訳してこっそり勘違いされているのも困る。
ただし、「わかりませんでした」という、投げっぱなしのコメントを残すのは論外。

ただ、何をもって、「必要なコメント」とするかは人によって違うので、難しいところですね。

そういうわけで、私は、前の記事に書いた内容のコメントのみ残すようにしています。

そして、このコメントがお客様(=私の派遣先)にどう評価されているかと言うと・・

  • チェックするポイントがわかりやすくて助かる
  • 原文の間違いが見つけてもらえて助かる

このように言っていただいています、今のところ。 そういう意味では、「プロ意識が足りない」どころか、お客様の利益につながるような翻訳を納品できているという意味で、十分にプロ意識を持って仕事をできていると思っています。

私にアドバイスをしてくださった先輩は、理由があり辞めてしまったのですが(その理由はまた別の機会で)、英文の表現はすばらしいものの、過去に訳されたものを見ると、勘違いして訳してしまっていた・・というのもあるようなので(私もあるかもしれないので大きなことは言えませんが)、少なくとも今のお客様にとっては、コメントがあったほうが良いと言えると思います。

もちろん、クライアントの要望に合わせて・・と言う条件付きですが、翻訳に対する精度が高いと評価してもらえるように努力をすることは、翻訳者にとっては重要だと思いました。