千里の道をまだまだ走る~ときどきひとやすみ~

分析機器、医療機器の日英翻訳をしています。翻訳者生活10年目に入りました。翻訳や日々のつぶやき(料理・パッチワーク・読書)など、いろいろ書いていきます。

翻訳者にとって大切なこと

*旧ブログ(アメブロ)からの転載・修正記事です。

前回、「すべては翻訳者の質で決まる」と書きました。
ただし、これは、「翻訳者が翻訳の品質の全責任を持つべき・・」というわけではありません、もちろん。

そのあたりについては別記事に改めて書く予定ですが、今回の話では、「誤訳や凡ミスのない、最低限通用する翻訳者」を前提として考えてもらえればと思います。(かなり曖昧な定義ですが)


さて、タイトルの、「翻訳者にとって大切なこと」。

翻訳の質は大前提なので置いておくとして・・。

担当者の方要望に応えること

まずはこれが一番大事なことではないかと思います。

発注担当者の方言うがままになれ、というのではありません、当然ですが。

翻訳会社が仕事を受ける時、クライアントから求められるものは仕事によって異なります。

  • とにかく品質重視で納期に余裕があるもの
  • とにかく量を重視、納期まで間がないから、品質は最低限のラインで良いもの
  • 品質もそこそこ、納期もそこそこ余裕があるもの
  • 品質もスピードも要求されるもの、など。
  • 翻訳は格調高くなくてもいいから、意味が正しく通じる程度で、そのかわり、用語だけは資料と必ず合わせて欲しい、表現は過去の訳と合わせて欲しい、とか。

とにかく、クライアントによって求めているものが必ずあります。

まず重要なのはそこ。ここは翻訳会社がきっちり抑さえられるよう、手を打ちます。 (手厚くチェックするなど。)

そして、品質ですが、翻訳会社として、表向き(対クライアント)は「品質はできるだけ高く、できるだけ短い納期で」としていますが、実際のところ、翻訳の質やスピードについては、実際はコストや翻訳者のスケジュールにより、社内で調整されて発注されることになります。
気持ちとしては最高の翻訳者に出したいところですが、他にも動いている案件があるし、コストにもよるし、できる範囲でできる限りいい翻訳を入手できるよう目指す・・という感じでしょうか。

  • この人の翻訳はすばらしいけれど、用語はあまりきちんと使ってくれないから今回はやめておこう
  • この人の翻訳はまあまあだけれど、ミスが少ないしスピードが速いからお願いしよう
  • この人の翻訳はすばらしいし、ミスも少ない、スピードも速い、でも、高いから厳しいかも
  • この人は、翻訳はまだ依頼してないけれど、トライアルも良かった。今回は納期にゆとりがあるからお願いしてみよう
  • この人の翻訳はいまいちだけど、とりあえず早い、今回は質は求められてないからこの人にお願いしてみよう、あとのチェックでおさえればなんとかなりそう
  • この人は指示書を読んでくれないから今回は頼まないで、などなど。

クライアントから求められるものと、翻訳者のスケジュールや社内の事情に合わせて、翻訳者の適性を見て翻訳の依頼が出されることになります。 (翻訳会社により異なるとは思いますし、私も直接翻訳者のコーディネートをしていたわけではないのでちょっと違うかもしれませんが、こういう会話はよくしました)

翻訳者に依頼する際に、「質は良くなくてもいいから」などということはよほどのことがない限り言うことはないと思いますが、納期だとか、用語をあわせるように、とか絶対に押さえてほしいところは確実に伝えてくるはずです。(これもまた発注者のレベルにも多少左右されますが)

担当者は案件によって違う場合もありますし、担当者の性格により、依頼の出し方や対応など、各人の好みも異なりますが、「担当者の求めているものを与え、満足(安心)してもらうこと」、これに尽きると思います。

いくら翻訳の質が良くても、提示された納期を守らない、指示を守らない翻訳者は論外。 (これはどの担当者にも共通ですが)

ですから、もらった連絡にきちんと返事を返す、翻訳時に気づいた原文のミスを報告するとか、フィードバックを反映させて同じミスを二度と繰り返さないなど、自分が要求にこたえられる翻訳者であること、ここまでできる翻訳者なのだということをいかにアピールするかが大事で、こういったことの積み重ねが翻訳者としての「付加価値」につながるのかな・・と思います。

ただし、担当者がちゃんとした人で、無茶を言わない人であること、英語のレベルがおかしくないことが前提になりますけれども。

そしてもう一つ。

信念を持つこと。

長くなってきたので、これについては次回に続きます。