千里の道をまだまだ走る~ときどきひとやすみ~

分析機器、医療機器の日英翻訳をしています。翻訳者生活10年目に入りました。翻訳や日々のつぶやき(料理・パッチワーク・読書)など、いろいろ書いていきます。

プレゼン資料の翻訳の話(続)

*旧ブログ(アメブロ)からの転載・修正記事です。

少し前の記事で、プレゼンの英訳もしていると書きました。

プレゼンの翻訳というと、ちょっとカッコよく聞こえるかもしれませんが、 出来上がった原稿の英語は、実はそれほどレベルの高いものではないかもしれません💦
すでに書いた通り、私自身、日本語でさえも話すのが得意ではないので、英語で魅力的なスピーチなんてできるはずもなく・・・💦

格調が高くも、素晴らしい表現が駆使できているわけでもないのですが、あるポイントにはこだわっています。
それは、「発表者が発表しやすい」、「非ネイティブでも理解しやすい」、「伝えたい内容が正しく伝えられる」ようなシンプルな英語に仕上げること。
まあ、当たり前すぎることではありますが。

シンプルな英語といえば、この方のこの本。 

さて、依頼されるプレゼンの内容ですが、営業の売り込みに使うような、いかにその商品が素晴らしいかを伝えるようなものというよりは、自社の海外支社・販社の教育だったり、前のモデルとの違いや問題点の解決に対しての報告だったり、機能や技術の説明だったりと、技術報告書に近い内容がほとんどです。

スライド部分はいつもの文書の翻訳とさほど変わらない内容なのですが、スピーチ部分は、発表者が日本語を書いてきます。(この内容は人によってそれぞれで、内容が重複していたり、曖昧な表現があったり、論理展開が謎な内容もあったりします。)
そして、発表者自信は、英語があまり書けない、話せない、でも英語で発表しなくてはいけない・・という方がほとんど。
さらにいうと、このプレゼンを聞く人たちは、アジアの国の英語非ネイティブの方々。

このようなプレゼン資料に対して私ができることは、なんでしょう? それは、最初に挙げたとおり、「発表者が発表しやすい」、「非ネイティブでも理解しやすい」、「伝えたい内容が正しく伝えられる」ようなシンプルな英語に仕上げることです。

英語がなんとなくしかわからない発表者に難しい英語を原稿を渡しても、理解ができないでしょうし、発表の際に原稿を読むのも大変になるでしょう。
その上、読むのが上手ではない文を長々聞かされても、聞き手が理解できないでしょう。

だから、できるだけ短く、シンプルな文で。
1つの文では1つのことだけを言うように。

そして、一番のこだわりは、「伝えたい内容を正しく伝える」こと。

発表者から渡される原稿は、主語、目的語が良くわからない、つじつまが合わない内容になっていることがあります。
説明の順序を変えたりしたくなることさえあったりします。

とにかくそのまま英語に直すと意味不明になることの方が多いので、自分なりに解釈したうえで、書き上げた英文の内容が間違っていないかを確認しながら、時には構成を変えさせてもらったりして英文原稿を作ります。もちろん、勝手に大幅に書き換えたりはしませんが。

実は、私にとって翻訳で一番楽しいのは、この作業です。
意味不明な文になるほど、楽しくなります。 (聞けば教えてくれる人がいるからストレスにならないのでしょうね。)

翻訳に求められているレベル、内容は、お客様や案件によって様々です。
そして、お客様から渡される原稿のレベルもそれぞれ。

私が今いる会社では、格調の高いすばらしい素晴らしい翻訳をすることよりも、技術者の書く怪しい(?)日本語を正しい内容で伝わるような英文を求められています。(たとえ拙い英語だったとしても)

翻訳者にとっては、依頼者自身のニーズにあった翻訳をすることが重要で、自分が面白く感じているものと依頼者から求められているものが一致しているので、お互いにとってとてもいい状態でやってこれたと言えるかもしれません。

ただ、そろそろそういう状態から脱出したくなってきたので、今後どうするか、そろそろ動き出したいとこではあります。

・・とまあ、依頼されるプレゼン翻訳のうち9割は、こんな感じの作業となっています。
実は、苦手なのは、残りの1割の依頼。

そんな依頼については、また後日書いてみたいと思います。